2011/11/29

朗読会「槐多朗読」レポート

2011年11月28日夜。明大前キッド・アイラック・ホール地下のブックカフェ〈槐多〉で、朗読会「槐多朗読」がおこなわれました。
ここはホールのオーナーのこだわりの蔵書が興味深いブックカフェで、天井が高く、村山槐多の絵も飾られていて、とてもおもしろい空間です。
客席は20席。カウンター席とテーブル席があります。そのうち2席を私が演奏機材のためにつぶしたので、定員18名。
1か月くらい前に告知を始めたときは、お客さんが全然集まらずどうなることかと心配だったんですが、最終的には満席となりました。それどころか、予約をいただいてなかった人が3名くらいいらして、臨時の椅子を出したりしてかなりぎゅうぎゅうな感じのなかでライブがスタートしました。

参加費がワンドリンク付きという設定だったので、ドリンクサービスが開始時間までに間に合わず、半分くらいの方はドリンクなしでスタートすることになりました。なので、中間のトークのときに、たっぷり時間をとって、全員にドリンクが行き渡るのを待ちました。しゃべることがなくなって困ったけれど。
次にやるときは、ドリンクサービスの時間を入れこんだプログラムを作っておくといいかもしれません。

前半は村山槐多の童話というか、奇妙な短編5連作を集めた「五つの童話」というテキスト。
朗読の野々宮卯妙は入口の正反対の一番奥の本棚前に陣取ってます。私は入口脇の、カウンターの一番手前の部分にキーボードを置いて立ってます。
ピアノがないので、楽器は持ちこみました。いつものKORGの61鍵のシンセと、MacBookAir、ミキサー、そしてBOSSのモバイルスピーカー。ひとりで持っていくにはけっこうな荷物です。これを羽根木から明大前までえっちらおっちら歩いて運んだのはかなりきつかったんですが、それよりきつかったのは、入り時間が開演40分前というあまり余裕がない時間になってしまったことです。
行ったらいつもの早川さんが不在で、初対面の海野さんが対応してくれました。コンセントはどこだ、スピーカーはどこに置いたらいい? キーボードはカウンターの上に置いてもいい? ならんでいた瓶類を片付けてもらったり、使わないケースや鞄を片付けたりしていたら、もうお客さんが来てしまいました。開演まで30分を切っていました。
初めての場所では音響がわからないのと、ピアノではなく電子楽器オンリーだったので、じっくりと音出しをしたかったんですが、それもままならず、お客さんもどんどん入ってきて、あっという間に開演時間をすぎてしまいました。
心の余裕がまったくないまま、スタート。私にはとても珍しいことです。自分のニーズを大切にしないとこういう目にあいます。それはお客さんに対しても申し訳ないことです。
が、野々宮はいつものように軽快に読みはじめたので、私は半分も集中できていなかったんですが、お客さんは朗読に集中してくれているようでした。

もうひとつ、私には集中できない原因がありました。
それは〈槐多〉のダクトの音でした。空調も換気扇も切ってもらったんですが、ホール全体の空調の音がダクトからどうしても聞こえてきて、それがかなり気になったのです。後半は「沈黙の朗読」のシリーズとして構成したテキストでしたが、静穏な環境とはいえなかったことが気になりました。
とはいえ、こういう環境的な制約はよくあることです。そもそもピアノがないということも、私には大きな制約です。こういった逆風にどのように対処していくのか、今後の課題ですね。

後半は「沈黙の朗読」シリーズのひとつと自分では考えている「金色と紫色との循環せる眼」という、槐多のテキストを構成し、私のオリジナルテキストも混ぜた作品です。
後半はだいぶ私も集中できるようになってきていて、しかし音響感覚はまったく不安で、ダクトの音も気になって完全な集中というわけにはいかなかったんですが、最後はお客さんとなにかを共有できた感覚がありました。
おいでいただいた皆さんには心から感謝します。

「沈黙の朗読」の後はいつもそうなるんですが、なんだか呆然としてだれも言葉も出ないような、脳みその言語領域ではなくもっと深いところ、身体につながっているところでなにかがうごめいているような感覚になったんじゃないかと思います。
しかし、何分後かには皆さんも言語領域にもどってきて、楽しいおしゃべり。
開演時には戻ってきた早川さんも「よかった」といってくれ、たちまち第2回の「槐多朗読」が決まりました。
2012年2月20日、なんと村山槐多の命日だというその日にやります。今回のようなことがありますので、みなさん、どうぞ予約はお早めにお願いします。18名限定です。
次回は私も余裕をもって準備して、マインドフルに臨みたいと思います。どうぞお楽しみに。
(水城ゆう)

2011/10/26

体験講座参加の方が書いてくれた体験記

 前回の現代朗読体験講座に参加された方(高校の演劇部の先生)が自身のブログで体験記を書いてくれてます。
 こちら

 ありがとうございます。
 なお、次回の体験講座は11月12日(土)に開催されます。
 詳細はこちら

2011/09/02

現代朗読協会が新宿ピットインに登場した日

少し前のことになります。8月30日、火曜日。
以前から告知していたように、フリージャズピアノの第一人者である板倉克行さんのライブに、げろきょがゲスト出演してきました。
会場は日本のジャズシーンのメッカといっても過言ではない、新宿ピットイン。
私も何度か行ったことがあるはずなんですが、30日はまったく新鮮な気持ちで行ったせいか、まるで初めて来たライブハウスのように感じました。壁にはマイルス・デイビスやコルトレーンやエルビス・ジョーンズの写真パネルが、サイン入り(!)で貼られています。すごーい。

出演者は板倉さんのほかに、ベースふたり、タップダンサーひとり、サックスひとり、フルートひとり、ヴォイスひとり、という変則。
そこへ朗読がふたり、野々宮卯妙と照井数男。
私は当初、小型シンセを持っていこうと思っていたのだが、小型とはいえけっこう機材が重いので、簡易キーボードに持ちなおそうとして、さらに考え直した。こんなちゃちな機材で勝負できるわけがない。どうせちゃちなものを使うなら、身体で勝負できるものにしよう。
というわけで、ピアニカ一本ぶらさげていくことした。

7時半、開場。お客さんがパラパラと入ってくる。でもがら空き。そして半分くらいはげろきょ関係者。みんなありがと〜。
しかし、始まってみてわかったのだが、これだけのすんごいスリリングなセッションを、これだけの数の人しか目撃できなかったなんて、なんて贅沢というかもったいないというか。ま、しかし、商業システムや大衆はこれだけ鋭くとんがった先端表現を、もはや必要としていないんだろうな、という実感。
でも、私は必要としている。必要としている人が、少ないけれどいる。そしてここから次の時代が始まる。

セッションは板倉さんが出演者を次々と指名する形で、
「まるで学校みたいだな」
と、板倉さんも笑っていたが、まったくなにも決めごとのないフリーセッションが、次々と展開していく。
板倉さんが私にピアノをゆずってくれ、2曲、セッションに参加できた。そして、最後はピアニカで参戦。これが意外にも好評で、板倉さんも大変おもしろがってくれて、よかった。私も楽しかった。
そして野々宮はもちろん、照井数男もがんばってくれ、われわれげろきょが日本の第一線のフリーミュージシャンと張り合って一歩もひけを取らないパフォーマンスを展開できることが照明される現場を、私は目撃していた。
(水城・筆)

2011/07/29

「KOTOHOGU! 〜言祝ぐ東北」で言祝いできた

(レポート by 水城ゆう)
昨夜は武蔵小山のライブカフェ〈アゲイン〉での朗読ライブ「言祝ぐ東北」に行ってきた。
主催はげろきょの仲間・唐ひづる。ゲスト朗読で野々宮卯妙も出演。私は少しだけピアノ演奏で助っ人。
しゃちほこばった堅苦しいライブではなく、お客さんに飲んだり食べたりしてもらいながら、トーク混じりの気楽なライブで、大変楽しかった。お客さんのノリもよかった。
とはいえ、しっかりとメッセージも込められていて、最後はいろいろな思いが伝わったのではないだろうか。

それにしても唐ひづるの軽妙なトークと自由自在な朗読は、本当にすばらしかった。東北弁の朗読も楽しかった。それにどちらかというと重厚な野々宮がからみ、化学反応を起こしていた。私のピアノなどまったく邪魔なくらいで、本当によい朗読は余計な音は不要なのだと実感した。
おふたりさん、お疲れさまでした。

2011/07/11

ライブパーティー追記

昨日書いたレポートは水城の自分用セットリストを見ながら書いてたので、演目に抜けがあった。
8演目に加えて、「7.」と「8.」の間にもう一演目あったのだった。
正しくは以下のとおり。

7. 水城ゆう「初霜」
 しまだなおこ
8. 水城ゆう「青い空、白い雲」
 まぁや&瀬尾明日香
9. 夏目漱石「蛇」
 野々宮卯妙

「青い空、白い雲」はゼミ生でライブワークショップにも参加していたまぁやと瀬尾明日香によるふたり読みで、ライブ直前になって急遽やることが決まったもの。
分かち読みや同時読みで構成されたものだが、あまりガチガチには決めごとはなかったとのこと。コミュニケーションのなかでストーリーが展開していくのが気持ちよかった。部分的に「問いかけと返答」のような読み方の工夫もあった。

2011/07/10

感動の羽根木朗読ライブパーティー

昨日7月9日(土)の午後3時から、羽根木の家で朗読ライブパーティーをおこなった。
「朗読はライブだ!」ワークショップ参加の4名を中心に、ほかにもゼミ生など何人かに参加してもらって、お座敷ライブを開催した。

まずびっくりしたのは、3時から始まって、終わったのは5時だった。たっぷり2時間、やっていた。
そして、暑かった。気温は35度を超えていた。羽根木の家にはエアコンなどもちろんない。
そんな条件のなか、お客さんと出演者が一体となり、2時間という時間をまったく感じないほどお互いに集中して、数々の演目が上演された。
終わってからも、さまざまな感想をいただいた。
音楽ライブや芝居をたくさん観に行っている人たちから、ダントツにおもしろかった、すばらしかったという感想をいただいた。今日になってもまだ感動が続いている、という話をゼミ生からも聞いた。
私はずっとピアノに張りついて、いわば出ずっぱりの状態だったのだが、まったく苦にならなかった。楽しくてしかたがなかった。

昨日の演目を書いておく。

1. 夏目漱石「夢十夜」より「第三夜」の群読パフォーマンス
山田正美、まぁや、瀬尾明日香、玻瑠あつこ
2. 菊池寛「形」
瀬尾明日香
3. 宮澤賢治「いちょうの実」
山田みぞれ
4. 水城ゆう「階段」
玻瑠あつこ
5. 怪談「皿屋敷」
まぁや
6. 太宰治「女生徒」より
嶋村美希子、照井数男
7. 水城ゆう「初霜」
しまだなおこ
8. 夏目漱石「蛇」
野々宮卯妙

「1.」は大変息の合った、すぐれたパフォーマンスだった。私からも再演希望。
「2.」はテキストを読んでもらえばわかると思うが、人の「形」が相手にどのような影響を与えるのかを書いた時代もの。それを瀬尾ちゃんがファンシーなワンピースを着て読み、途中でそれを脱いでお客さんに「形」とは何か、という命題を付きつける斬新な二重構造のパフォーマンスで表現。
「3.」は今回のワークショップが初朗読のみぞれさんが、なにも飾らない、なにもたくらまない、無垢な朗読で全員を魅了した。
「4.」は大阪弁をところどころで交えたり、別の出演者をからませたり、小道具にクイックルワイパーを使ったりと、アイディアいっぱい、動きいっぱいの「楽しい怪談」となった。
「5.」は定番の古い怪談を、なんとゴスロリファッションで決めたまぁやが、これもまぁやからのリクエストで音楽もゴシック調のオルガンサウンドで付けて、日本ではなく西洋風のテイストで上演して、斬新きわまりなかった。
「6.」は若手ふたりによる、もはやユニットとして(くやしいけれど)息の合った観のあるパフォーマンスを、照井くんによれば「いいふうにでたらめにやれた」という目の離せないスリリングに見せてくれた。
「7.」は14歳の少女の思春期の複雑な心情を描いた作品だが、中学生の娘さんの制服をこっそり借りだしてきて着込んだなおさんが、動きまわるほどに時間をさかのぼって14歳にタイムスリップし、思春期の心情を吐露する朗読を痛々しく表現してくれたのがすばらしかった。
「8.」はバロック朗読第一人者が重厚に歪んだ朗読をスタートしたと思いきや、途中から自由自在にピアノとのガチンコセッションを繰り広げ、その実力を存分に見てつけてくれた最高クオリティのパフォーマンスであった。

残念ながら、ビデオカメラの不調で、その記録は残っていない。
来場いただいた方の目には焼きついていることだろう。ライブとはそういうものだ。
これらの演目は、もう少し観客にとってよい条件で再演できないか、と思っている。現時点で、私と出演のみんなとこの日の観客による、最高傑作だからだ。
(演出:水城ゆう)

2011/06/30

夏うふ&読んで歌うコンサート@さいたまが終了

昨日、埼玉新都心にある埼玉県障害者交流センターのホールで、「読んで歌うコンサート」をおこなってきました。
現代朗読協会のゼミ生でもある「浦和区市民活動ネットワーク公認団体・アーツ&ケア・コミュニティ」の日榮さんの主催で、私と伊藤さやかによる音楽ユニットOeufs(うふ)と、現代朗読協会の野々宮卯妙、照井数男とで、歌と朗読のコンサートをおこないました。

30人くらいの方がいらしてくれて、皆さん、熱心に最後までお付き合いくださいました。
途中、宮澤賢治の「双子の星」の朗読パフォーマンスもおこなったんですが、20分以上のかなり長い演目にも関わらず、最後までしっかりと聴いていただきました。
小さなお子さん連れのお母さんがたもいらっしゃいました。
終わってから、抱きつかんばかりにして握手を求めてこられたお年寄りもいらして、私も大変楽しかったです。

2011/04/28

東四つ木デイサービスセンターで音読ワーク

葛飾区の東四つ木デイサービスセンターに、出張音読ワークに行ってきた。
ゼミ生の朱鷺さんが『音読・群読エチュード』を買ってくれて、それをデイサービスセンターの所長さんに見せたところ、「これはおもしろい」といっていただき、所長さんも一冊買ってくれた。それがきっかけで、実際に私が行って、皆さんと音読ワークをやることになったのだ。

行ってみると、とても活気のあるにぎやかなセンターであることにまず驚いた。
朱鷺さんもおられた。お会いするのはひさしぶりである。といっても、いつもSkypeではお声を聞いているのだが。

さっそくワークをやる。
お年寄りの方が4、50人くらいだろうか、それぞれテーブルを囲んでくつろいでおられた。
近刊の『音読・群読エチュード』からいくつかのエチュードを選んで、職員の方もいっしょにやる。私のほかに、現代朗読協会の野々宮がアシスタントで来ている。
まずは宮沢賢治の「星めぐりの歌」。最初はいっしょに声を出して詩を読み、そのあと「質問と返答」のエチュード。
こちらでは音読ワークはあまりされたことがないということで、その時点ではまず少しとまどわれていた方もいたようだが、リズム読みのエチュードになると皆さん手拍子でノリノリになってきた。リズム読みのエチュードで使ったテキストは、ロバート・ブラウニングの「春の朝」という詩を上田敏が訳したもの。
最初は手拍子で、そのあと私がピアノを弾いて、全員でひとつの音楽を奏でるように音読をしてもらった。

やっている途中から、皆さんの表情がどんどんイキイキしてきて、眼も輝いて、あちこちから声があがってくるのが、私も楽しかった。
最後は皆さんもよく知っている唱歌「早春賦」や「花」「さくらさくら」を一緒に歌った。
所長の森さんや職員の方もとても喜んでくれて、行ったかいがあった。私もとても楽しく、勉強になった。森さんからは「お年寄り向けの本も書いてほしい」といわれた。その際にはサポートしてくれるそうだ。ありがたい。ちゃんと考えてみることにしよう。

この音読ワークに興味のある方は、気軽に声をかけていただけたらと思う。
子どもだけでなく、お年寄りにもとても有効であることがわかったし、現代朗読協会でやっているように大人にも大変役に立つエチュードなのだ。
(演出・水城ゆう)