2010/05/19

中野ピグノーズ「げろきょでないと」Vol.13、終了レポート

 毎月2回、第一・第三火曜日の夜にやっている朗読と音楽のライブ「げろきょでないと」だが、5月はゴールデンウイークがあったので、第一週は休み。第三週の昨日18日に、13回めとなるライブが行なわれた。
 昨日の出演者は私(ピアノ)以外に、野々宮卯妙、照井数男、菊地裕貴の3人の朗読。菊地裕貴は前回につづいて2回めの登場。野々宮と照井はこのところずっとつづけて出演している。

 昨日の演目は大変バラエティに富んでいた。照井数男が太宰治の作品の初朗読をしたほか、菊地裕貴が私の「初霜」という14歳の少女の話を暗くくらく読む。野々宮も私のサウンドスケッチ作品を読んだ。
 野々宮と菊地裕貴によるツイン朗読もあった。「温室」と、夏目漱石の「夢十夜」から第十夜は、このところツイン朗読をやることが多くなったこのコンビでの大変息のあった、しかし即興的な表現がおもしろかった。

 今回一番おもしろかったのは、照井数男がみずから準備してきた一種の「前衛朗読」である。芥川龍之介の「蛙」という、どちらかというと癖はあるが他愛のない短い作品を読んだのだが、これをあらかじめ読んで音響的処理をほどこしたCDを流しながら読んだのだ。これが非常におもしろい効果をあげていた。
 いわば過去に違う場所で録音され、処理された音が、いまいるリアルな照井数男の声と重なっている。リアルな照井が、むしろ過去の照井の声にペースを合わさなければならなかったり、読み方を指示されたりする。といいつつ、やはりリアルな照井はその場に生身で存在し、我々はそれを聴いているのだ。
 おもしろかった。このスタイルはまたやってみてほしい。

 来客もいろいろで、楽しかった。アイ文庫のオーディオブック・リーダーの育成講座を受けた人たちや、常連のマルさん、ひづるさんは「祈る人」の朗読に参加してくれた。現代朗読協会のワークショップを受けた方もいらしてくれた。
 英語の歌の歌詞を朗読してくれたりそのまま歌ってくれたオギノさん、フリージャズピアニストの板倉さんがいつものようにいらしていただいた。
 ネットで知ったという若い男がひとりいたが、大変たちが悪いやつで、私たちの大切な共演者である菊地裕貴に不快な思いをさせたので、以後、出入り禁止に処す。

 いろいろあったが、このところどんどん盛り上がってきて、音楽を超える朗読ライブの可能性が毎回噴出してきているので、ぜひ皆さんも目撃者あるいは当事者になってほしい。
 次回「げろきょでないと」は6月1日(火)、中野ピグノーズにて20時スタート。